オンデマンド印刷の特徴と使いどころ
ポスターやリーフレット、ラベルシールなど、印刷物を発注するときは印刷方法を選ぶ必要があります。オンデマンド印刷は広く使われている方法ですが、どこが得意で、どこから不向きになるのかまで把握している人は多くありません。
印刷方法によって向く場面は大きく変わります。とくに枚数と仕上がりへの要求で、選ぶべき方法が入れ替わります。
当社は、オンデマンド印刷やオフセット印刷など複数の印刷方法に対応する、シール専門の印刷会社です。商品用のシール制作をご検討中の方は、以下からお問い合わせください。
オンデマンド印刷とは
オンデマンド印刷とは、インクジェットやトナーのプリンターで刷る印刷方法です。版を作らないので、データがあればそのまま刷り始められ、必要なときに必要な枚数だけ出せます。「オンデマンド(要求に応じて)」の名のとおり、1枚からでも好きなデザインで刷れる点が強みです。
その手軽さには引き換えがあります。仕上がりは、版を使う印刷方法にはかないません。
費用の面でも、少数ならコストを抑えられる一方、大量に注文するとむしろ高くつくことがあります。少数で安いから常に得、とは言えません。
オンデマンド印刷とオフセット印刷の違い
両者を分ける軸は、適正ロットと版の有無です。オフセット印刷は、作った版のインクを、ゴムのブランケット(媒介物)を介して印刷面に転写します。版から直接ではなく、版、ブランケット、印刷面の順に写すので、版が用紙に触れることはありません。
ほかの違いは、この二つから付随して生まれます。並べると次のとおりです。
| オンデマンド印刷 | オフセット印刷 | |
| 版 | 不要 | 必要 |
| 用紙 | 特殊な用紙だと対応できない場合もある | ほぼすべての用紙に対応できる |
| 適正ロット | 詳しくはお問い合わせください | 詳しくはお問い合わせください |
| 単価 | 大ロットだと高い | 小ロットだと高い |
| 仕上がり | インクジェット(やや劣る) トナー方式(そこそこ) | 細部まできれい |
| 解像度 | 多少劣る | 非常に高い |
| 特色印刷 | できない | できる |
費用に直結するのは単価の行です。オフセット印刷は刷る枚数が増えるほど1枚あたりの単価が下がるので、大ロットならオンデマンド印刷よりコストを抑えられます。再現性が高く、細部までそろえて量産できることも強みです。
反対に、版を作る初期コストがかかるので、小ロットには向きません。決め手になるのは、印刷物の枚数と、仕上がりにどこまで求めるかです。
オフセット印刷については、以下の記事で詳しく解説しています。
オフセット印刷
オンデマンド印刷の4つの印刷方法
オンデマンド印刷といっても、機械の仕組みは一つではありません。おもに4方式に分かれます。
- インクジェット方式
- トナー方式
- リボン転写方式(サーマルプリント方式)
- 大判出力方式
印刷方法1 インクジェット方式
インクカートリッジから、印刷面へインクを直接吹きつける方式です。オンデマンド印刷のなかでは発色が良く、鮮明さが求められる画像でも、それなりの仕上がりで刷れます。
高解像度に対応した機種があり、写真の印刷によく使われます。近年は食品や布製品へのプリントにも広がっています。弱点は速度で、小さな穴からインクを吹き付ける構造上どうしても遅く、量産には向きません。
インクジェット印刷とは?他の方法との違いやメリット・デメリット
印刷方法2 トナー方式
オフィスの複合機のほとんどは、このトナー方式です。液体のインクではなく、帯電性の高い粉末状のインク(トナー)を静電気で付着させます。レーザーを使うことから、レーザー方式とも呼ばれます。
インクジェットと比べると、仕上がりがきれいで印刷スピードも速く、短時間で大量に刷れます。耐久性が高いため、長期保存する書類にも向いています。長期的なコストを抑えやすいことから、現在のオンデマンド印刷では主流の方式です。
印刷方法3 リボン転写方式(サーマルプリント方式)
送り状やバーコードラベルの発行が主な用途で、熱転写用のインクリボンを使います。
リボンには、熱で溶けるインクが塗られています。用紙にリボンを重ね、上から印字ヘッドで熱を加えると、当たった部分のインクだけが溶けて紙に移り、文字になります。サーマルプリント方式とも呼ばれる仕組みです。
機器は「熱転写プリンター」と呼ばれ、業務用でよく使われます。印刷はモノクロになります。
印刷方法4 大判出力方式
大型の機械で、ポスターや看板のような大きなシートに印刷する方式です。
厳密にはインクジェット方式であることがほとんどですが、プリンターのサイズが通常と違うため、別の印刷タイプとして区別されています。耐水性・耐候性に優れたインクが採用されることが多く、屋外で使う制作物にも向きます。
オンデマンド印刷の3つのメリット
次のどれかに当てはまる場合は、オンデマンド印刷が候補に入ります。
- 少部数のみ制作したい
- データを整えたらすぐに印刷を始めたい
- 内容を少しずつアレンジしながら印刷したい
メリット1 少部数でも低コストで作成できる
版を作らないので、少部数でも割高になりにくい。初期費用を抑えるのに向いた方法です。数種類の販促アイテムを少しずつ作って顧客の反応を見る「テストマーケティング」にも使えます。
同じデザインを大量に刷る場合は、版を使うオフセット印刷の方がコストを下げられます。必要な枚数が限られているときや、在庫を抱えたくないときに、オンデマンド印刷の強みが出ます。
シール印刷を格安に制作依頼する6つのポイントをご紹介
メリット2 データ入稿から印刷までの工程がシンプル
注文から印刷が始まるまでの間に、版を作る工程が入りません。デザインデータからそのまま刷れるためです。
やり取りもインターネット上で完結させられるので、手続きの手間は最小限で済みます。
メリット3 デザイン変更にも対応しやすい
場面に合わせてデザインを少しずつ差し替えたい、シリアルコードを一枚ずつ印字したい。こうした刷り分けが、オンデマンド印刷の典型的な使い方です。
オフセット印刷は版の形が決まっているため、途中で細かくアレンジすることができません。オンデマンド印刷ならデータを直すだけで、印刷内容を変えられます。
オンデマンド印刷を利用する際の5つの注意点
発注してから困らないよう、先に確認しておきたい点が5つあります。
- イメージと異なる色調になる可能性がある
- 再注文の際に同じ仕上がりにならない場合がある
- 印刷後に用紙が波打つことがある
- 発注部数が多いとコストがかかる
- 特色インクに対応できない
注意点1 イメージと異なる色調になる可能性がある
社内の確認を通したデザインデータの色が、刷り上がった現物ではどこか違って見える。原因は、パソコンの画面(RGB)と印刷物のインク(CMYK)で、色をつくる原理がまったく違うことにあります。パソコンで作ったデザインをそのままプリンターに出力するオンデマンド印刷では、イメージと異なる仕上がりになる可能性があります。
RGBとCMYKの違いは次のとおりです。
| RGB | ・デジタル画面で採用されている色の仕組み ・「光の3原色」をもとに、色の発光度合いを調整することで、さまざまな色調を表現している |
| CMYK | ・インクなどの染料で採用されている色調の仕組み ・色の4原色 C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(キープレート=黒)の4色でさまざまな色を作り出す |
RGBは色が混ざるほど白に近づき、CMYKは色が重なるほど黒に近づきます。材料が違えば、同じ色を完全に作ることはできません。オンデマンド印刷は再現できる色調に限りがあるので、色を忠実に合わせたい場合は、オフセット印刷のように色の再現性が高い方法を選んでください。
CMYKとは?印刷データをCMYKで作る方法やRGBとの違いも解説
注意点2 再注文の際に同じ仕上がりにならない場合がある
頻度は稀ですが、同じデータで再注文しても、前回と同じ色調にならないことがあります。オンデマンド印刷は、色の再現性がほかの印刷方法より低いためです。前回の残りと今回の納品分を並べて使う印刷物では、この差が気になる場合があります。
注意点3 印刷後に用紙が波打つことがある
濡らした紙を乾かすと波打ちます。それと同じ現象が、印刷機の中で起きることがあります。
デジタル印刷機は180℃以上の熱を発していて、用紙は印刷の工程でその中を通ります。このとき紙に含まれていた水分が蒸発し、波打ちが起きます。出方は用紙の種類や周辺環境によって変わります。
起きやすいのは薄くて大きな用紙です。気になる場合は厚い用紙にするか、別の印刷方法を選びます。
注意点4 発注部数が多いとコストがかかる
少部数の見積もりが安かったので、同じ調子で数を増やして考えたくなりますが、部数が増えると費用は逆転します。印刷会社によって差はあるものの、枚数が多くなるとオフセット印刷の方が費用を抑えられることが多いです。同じデザインを大量に刷るなら、版を使う印刷方法を選んでください。
オンデマンド印刷機には購入後も費用が続くので、部数を増やしても単価が下がりにくくなります。多額の年間保守料金に加えて、「カウンター料金(使った分だけ支払う費用)」がかかり、刷るほどコストが発生する仕組みです。(トヨタの車を買ったあと、ガソリン代とは別に、走行距離分の費用を毎月トヨタに払うイメージです)このため大ロットには向きません。オンデマンド以外の印刷機は、購入後にこうした別途費用が発生しません。
注意点5 特色インクに対応できない
特色インクは、指定の色を調合して作るインクです。デザインで特色を使いたい場合、基本的にオンデマンド印刷では対応できません。
特色に対応したオンデマンド印刷機もありますが、一般的にはあまり見かけません。使うかどうかは方法を選ぶ段階で決まるので、使うならオンデマンド印刷以外を選びます。
特色とカラー4色の違い、印刷会社に依頼するときのポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。
特色を使ったデザインは、オンデマンド印刷では対応が難しいことがあります。その場合はオフセット印刷など、特色に対応できる方法になります。年間約3,000件のシール印刷案件を受注しているプロに相談しながら、制作を進められます。お問い合わせください。
オンデマンド印刷とオフセット印刷以外におすすめの2つの印刷方法
オンデマンド印刷とオフセット印刷のほかにも、選択肢になる印刷方法があります。凸版印刷とシルク印刷の2つです。
- 凸版印刷
- シルク印刷
印刷方法1 凸版印刷
オフセット印刷と同じく版を使いますが、凸版印刷は版の凹凸を利用して、用紙にインクを直接転写します。オフセット印刷より工程が少なく、低コストで大量に作れます。シール印刷の9割が凸版印刷で行われています。
グラデーションや4色カラーの仕上がりの美しさはオフセット印刷に及びません。ただ、版を使っているためオンデマンド印刷より再現性が安定し、細かい画線部もシャープに出ます。シールやラベルのように小さい文字を刷る用途で、コストを抑えながら細かいデザインの再現性も確保したいときの候補になります。
上の画像で紹介した凸版印刷の事例は、以下から詳しく確認できます。
制作事例|みなべクラフト梅酒ラベル
凸版印刷とは?オフセット印刷との違いやメリットを解説
印刷方法2 シルク印刷
耐久性が必要なとき、あるいは一部にアクセントを付けたいときに使うのがシルク印刷です。
版に重ねたスクリーン(化学繊維で織った専用のメッシュ)の上からインクを押しあて、下の印刷物に文字やロゴマークを刷ります。最大の特徴はインクを厚く塗れることで、凸版印刷やオフセット印刷で刷ったうえに、透明なニスをシルク印刷で厚く盛ると、立体感のある艶が出ます。
耐久性と耐候性に優れているため、屋外での使用も可能です。商品名やロゴマークなど目立たせたい部分に使うと、デザインの印象が強くなります。
上の画像は、当社が実際にシルク印刷で作ったラベルシールです。樹脂凸版印刷で刷り、シルク印刷で透明ニスの厚盛加工をしています。事例の詳細は以下をご覧ください。
制作事例|月兎ソースラベル
シルク印刷とは?オフセット印刷との違いや印刷工程を6ステップで解説
印刷方法は目的に合わせた使い分けが大切
オンデマンド印刷は、1枚からでも気軽に注文できます。一方、版を使う印刷方法は再現性が高く、細部まできれいに刷れるので、大量生産に向いています。
枚数、色をどこまで合わせたいか、特色を使うか。印刷方法に迷っているなら、この中で決まっていない点はどれでしょうか。
当社は、シール専門の印刷会社としてオンデマンド印刷やオフセット印刷など、複数の印刷方法に対応しています。商品用のシール制作で印刷方法に迷う場合は、以下からご相談ください。
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