商品ラベルのデザインで手戻りを防ぐ|表示・貼り方・色の決め方
商品ラベルのデザインは、配色やロゴを考える前の段階で大枠が決まっています。表示しなければならない情報がどれだけあるか、どこにどう貼るか、再注文のたびに同じ色を出せるか。ここを後回しにして見た目から固めると、あとになって一括表示が入りきらない、冷蔵ケースで剥がれる、再注文で色がずれる、といった手戻りにつながります。
この記事は、新商品の立ち上げや既存ラベルの切り替えでデザインを進めている担当者の方向けです。当社の制作事例を交えながら、印刷と運用の条件をデザインにどう反映するかを書きます。見積もりの項目や発注の流れ、印刷会社の選び方は「法人向けシール・ラベル発注の完全ガイド」にまとめています。
数十枚から数百枚の試作品や社内用であれば、市販のラベル用紙とプリンターでも足ります。冷蔵や水濡れのある環境で使う、ラベラー(自動貼付機)で貼る、同じラベルを継続して発注する。このどれかに当てはまるなら、印刷会社の仕様を前提にデザインを進めてください。
商品ラベルのデザインは表示項目から余白を決める
表面のデザインが社内で承認されたあとに、裏の一括表示を空いたスペースへ入れようとして入りきらない。食品ではこうしたことが起こりえます。文字サイズに下限があるためで、義務表示に必要な面積を先に確保し、残りをデザインに使う順番にしたほうが破綻しません。
一般用加工食品で表示が必要な項目は、名称、原材料名、添加物、内容量、期限、保存方法、食品関連事業者、製造所、栄養成分などです。文字の大きさは原則8ポイント以上、容器包装の表示可能面積がおおむね150cm²以下なら5.5ポイント以上とされています(大阪府:一般用加工食品の表示について)。
容器が小さければ省略できるのでは、と思うかもしれませんが、省略できる範囲は限られています。表示可能面積が30cm²以下であれば原材料名・添加物・内容量などは省略できる一方、名称、保存方法、期限、食品関連事業者、アレルゲンなどは省略できません。
既存ラベルの切り替えでは、アレルゲン表示も見直しの対象になります。特定原材料は2026年4月1日からカシューナッツが加わって9品目(えび、カシューナッツ、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生)になり、経過措置は2028年3月31日までです(消費者庁:加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック(事業者用)(令和8年4月))。
化粧品は薬機法、酒類は酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(酒類業組合法)でも表示義務があり、食品とは必要な項目が異なります(酒類は国税庁:酒類の表示を参照)。当社では、食品や化粧品などの表示要件、輸出先の表示規制を踏まえた仕様の提案はできます。ただし、表示内容が法令に適合しているかの最終確認は、商品の中身と製法を把握している発注側の品質保証部門で行い、必要に応じて所轄の保健所などに相談していただく前提です。
事例:成分表示の多いプロテインのラベル

エルガーホールディングス様のプロテインなどの成分表ラベルは、表示する内容が多いため、160×90mmの寸法を取って表示面を確保しています。素材は、文字や罫線をシャープに出しやすく、紙素材の中ではコストを抑えやすいアート紙(アート73kg)を選び、普通糊・凸版の1色刷り、2枚/1シートで納品しています。
貼る場所と貼り方で、素材・寸法・納品形態が決まる
冷蔵ケースに並ぶ商品かどうかで、素材の候補はかなり絞られます。結露や水濡れがあると紙のラベルは水分で破れやすいため、合成紙のユポが候補に挙がります。粘着剤は素材とは別の軸で、貼る対象を見て決めます。ガラス、樹脂、紙箱など貼る対象が異なる場合は、事前に粘着の相性を確認しています。
納品形態は、手で貼るかラベラーで貼るかで変わります。手貼りならシート、ラベラーならロールです。ロールでは、ラベルがどの向きで出てくるかという巻き方向(外巻き・内巻き、右出し・左出し・頭出し・尻出し)と、芯になる紙管の内径(76.2mm、38.1mm、25.4mm)を決める必要があり、どちらも使う機械によって決まります。デザインが先に完成していても、機械の仕様がわからなければ印刷には進めません。ラベラーを使うなら、機械側の情報は早めに確認しておいてください。詳しくは「ロールラベルの巻き方向」で解説しています。
ボトルに巻くラベルは、寸法が容器の径と貼り方によって決まります。正面だけで収めるのか、側面まで回り込ませるのかで、一括表示を置ける位置も変わります。
| 事例 | 使う環境・貼り方 | 素材・粘着 | 寸法・納品形態 |
|---|---|---|---|
| 月兎ソース | 冷蔵のソースボトル/機械貼り | ユポ80μ/水溶強粘着 | 95×114mm/ロール |
| OBROS COFFEE | コーヒーのボトル/手貼り | 和紙コットン/水溶強粘着 | 150×55mm/シート(5枚/1シート) |
冷蔵のソースボトルに機械で貼る場合
月兎ソース様のラベルは冷蔵で保管されるソースボトルに貼るため、素材には水分による破れを抑えられるユポ80μを選び、粘着は水溶強粘着にしています。食品表示のスペースは、正面から側面まで巻く95×114mmの寸法で確保しました。凸版とシルク印刷に金ツヤ箔と透明厚盛りを重ね、機械貼りに合わせてロールで納品しています。
手貼りで、印刷をしない選択
OBROS COFFEE様のラベルには印刷をしていません。重視したのは、紙の質感とエンボス(浮き出し加工)の凹凸だけで商品シールとして成立させることでした。素材は和紙(和紙コットン)、粘着は水溶強粘着、寸法は150×55mm。コーヒーのボトルへの手貼り作業に合わせて、5枚/1シートのシートで納品しています。
ブランドカラーは番号で指定し、試作で確かめる
モニターで見た色は、そのままでは印刷に出ません。画面は光で色を表現し、印刷はインキで表現するため、鮮やかな色ほど差が出やすくなります(画面と印刷で色が違って見える理由)。ブランドカラーのように毎回同じ色で出したい色は、PANTONEやDICの番号を明記して特色で指定してください。
この指定が効いてくるのは、実は初回よりも再注文のときです。エルガーホールディングス様のラベルはPANTONE 282Cの1色で指定しているため、再注文のときも「282C」という番号ひとつで色を共有できます。当社では再版時に前回の色に合わせて印刷しており、印刷用データは10年間保管しています。
試作(色校正)を入れるかどうかは、費用と手間を考えると迷うところです。当社の試作は、本番と同じ素材・同じ仕様で少量を刷る有料の工程です。試作を行っていないことだけを理由に、不具合のお申し出を一律にお断りすることはありません。ただし、色見本や試作で事前確認をしていない場合の、印刷・加工上通常許容される範囲の色差・質感差は、不良品として扱いません。新しいブランドカラーを初めて刷るとき、素材を切り替えるときなど、仕上がりのイメージが社内で共有できていない段階では、量産の前に試作で確かめておくほうが安全です。色がすでに決まっている定番品の再注文なら、前回色に合わせる再版で足りる場合もあります。
入稿データでつまずきやすいところ
入稿はIllustrator形式が基本で、Illustratorで作成・保存したPDFと、Photoshopのデータも受け付けています。いずれも原寸サイズで作成し、トンボ(トリムマーク)を必ず付けてください。デザイン会社や社内のデザイナーにデータ作成を頼む場合は、次の点を最初に伝えておくと、戻しが減ります。
- カラーモードはCMYK(RGBのままだと、変換時に色がくすむ)
- 背景色や写真は仕上がり線の外まで2mm以上の塗り足しを付ける
- 線幅は0.2pt以上を推奨
- 画像は実寸で300dpi以上、リンク切れがない状態にする
- 文字はアウトライン化する
- 透明素材に刷る場合は、白版を別レイヤーにK100%で作成する
塗り足しを付けておくのは、断裁や型抜きでわずかな位置ずれが起きても、端に白いすき間を出さないためです。細かい数値や無料の入稿用テンプレートは「データ入稿ガイド」にまとめています。社内でデータ作成まで手が回らない場合は、デザイン制作からご依頼いただくこともできます。
アイテム数と版の数も、デザインで決まる
費用もデザインの決め方で変わります。同じデザイン・サイズ・仕様で、版・型の保管期間内であれば、原則として再注文時の版代・型代はかかりません。保管期間は最終発注日から3年間です。3年以上経過した場合や仕様を変更する場合は、別途費用が発生します。保管期間内でも、劣化・破損などで再制作が必要になる場合があります(シール印刷の料金と見積方法について)。反対に、文字を1か所直しただけでも版を作り直すことになる場合があります。アレルゲンや栄養成分のように改訂が起こりうる情報をどのラベルに載せるかは、デザインの段階で考えておく価値があります。
数量が増えるほど単価は下がり、経済的なロットの目安は1種類あたり3,000枚以上です。味違いや容量違いでデザインを細かく分けると、総数が同じでも1種類あたりの枚数が減って単価が上がりやすい点は、見落とされがちです。
アイテム数が多い場合は、仕様を揃える方向でデザインを組むと運用が楽になります。エルガーホールディングス様ではアイテムが多いため仕様を共通化し、複数アイテムを同時に発注する際に品番と数量を確認しやすいよう、専用の発注書で運用しています。
表示項目や貼り方がまだ固まっていない段階でも、未定と分かる形でそのまま伝えてもらうほうが、使用条件から逆算して仕様を詰めやすくなります。
法人向けラベル・シール印刷のご相談
貼る製品や使用環境、寸法、予定数量が分かる範囲でご相談ください。
素材や加工が決まっていない場合も、用途に合わせて整理しながらご提案します。
通常2時間〜半日以内に回答します。