シール印刷の色校正とは?必要な場面と判断の基準
シール印刷の色校正は、本番の印刷に入る前に、実際に刷った色を目で見て確かめるための工程です。刷り上がったラベルが思っていた色と違ったとき、原因は印刷会社の腕だと考えられがちです。ただ、色のトラブルは、印刷の精度より手前の段階で起きていることがあります。発注する側と印刷する側のあいだで、「どの色を正解とするか」が共有されないまま印刷に入ってしまうケースです。
色校正は、その正解の色を本番前に決めておくための手順です。省いても問題の出にくい案件もあれば、省くと後で説明がつかなくなる案件もあります。その分かれ目を、ラベルならではの色の変わり方と合わせて説明します。
シール印刷の色校正には、簡易校正と本機校正がある
色校正のやり方は、専用の出力機で色を再現するデジタル校正(インクジェット出力やDDCPなど)と、本番と同じ印刷機・インキで刷る本機校正に、大きく分けられます。出力機を使う前者は、簡易校正と呼ばれることもあります。
デジタル校正は手軽ですが、印刷機も素材も本番とは別のものです。レイアウトや文字の確認には使えても、色の最終判断に使うには限界があります。特にラベルは、紙だけでなくフィルムや金・銀のホイルなど素材の幅が広く、素材が変われば色の見え方も変わります。本番と違う条件で出した色は、どこまでいっても「本番に近い色」にとどまります。
当社の色校正は本機校正です。本番と同じ印刷機で刷るため、校正で確認した色がそのまま量産の目標になります。費用と日数は、見積もりの際にご案内しています。
「緑」と言われても、同じ緑を思い浮かべているとは限らない
上の色は、どれも「緑」です。ご自身の商品ラベルに使う緑を思い浮かべたとき、どれがいちばん近いでしょうか。
答えは人によって分かれますし、同じ人でも見ている画面や照明が変われば、選ぶ色が変わることがあります。印刷会社は、ご担当者の頭の中にある緑を推測できません。「いつもの緑で」「もう少し鮮やかに」という言葉だけでは、刷る側は何を目標に合わせればよいのか決められません。
だから色を合わせたいときは、言葉ではなく「これに合わせてほしい」と示せる基準を用意します。以前お使いのラベルの現物や色見本、PANTONEやDICの色番号がそれにあたります。色校正も、その基準を刷った現物で確定させるための手段です。
コーポレートカラーのように、どの商品でも同じ色で出したい色がある場合は、4色(CMYK)の掛け合わせで再現するより、その色専用に調合したインキを使う「特色」での指定が向いています。4色の掛け合わせは、インキの濃度がわずかに動くだけで色味が振れるためです。
コーポレートカラーを安定して出したい方は、こちらもあわせてご覧ください。
特色とは? | カラー4色と特色の違いを簡単に説明しました
モニターや社内プリンターの色は基準にならない
データを作ったときの画面の色や、社内のプリンターで出した色を見本にしたい、というご相談もあります。気持ちはわかるのですが、どちらも印刷の基準にはなりにくいものです。モニターは光(RGB)で色を表示し、印刷はインキ(CMYK)で色を再現するので、表現できる色の範囲がそもそも違います。モニターの機種や設定によっても見え方は変わります。社内プリンターは、色の出し方も用紙もラベル印刷とは別物です。
RGBとCMYKの違いは「印刷データはCMYKで作る理由」で、プリンターで出した色と印刷の色がずれる理由は「シール印刷はプリンター印刷と色が違う?原因と対処法」で詳しく説明しています。
4色カラーの色は、印刷機でどこまで調整できるか
「校正で色を見て、気になるところは本番で直してもらえばいい」と考える方もいます。ここは誤解されやすいところです。
4色カラーの仕上がりは、ほぼ入稿データで決まります。印刷機の側で動かせるのは、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの版ごとのインキ濃度くらいです。濃度を変えると、その版の色が使われている部分が全体で一緒に動きます。下の図はあえて極端にしていますが、同じデータでも濃度の振れ方次第で、ここまで印象が変わります。
「このロゴの青だけ少し濃く」「背景はそのままで、写真だけ明るく」といった、狙った部分だけを動かすことは、印刷機側ではほぼできません。青いロゴを濃くしようとシアンを上げれば、写真の空や緑まで青みが強くなります。一部分だけ色を変えたいなら、データを修正したうえで、もう一度色を確認することになります。
同じデータでも、素材と加工で色は変わる
ラベルの色校正で見落とされやすいのが、素材の影響です。データも印刷機も同じなのに、刷る素材が違うだけで色の印象が変わります。
実際に刷っていて感じるのは、上質紙や和紙などの紙素材では、色が若干暗くなることです。インキが紙に染み込むぶん、同じデータでも発色が落ち着いて見えます。和紙の風合いを活かしたいラベルで、画面で見た鮮やかさをそのまま期待すると、刷り上がりとの差が気になりやすくなります。
金のホイル素材の上に白を刷った場合も、白が若干黄色っぽくなります。下地の金の影響を受けるためで、真っ白な文字を想定していると違和感が出るところです。
透明フィルムでは、色の下に白を敷く「白版」を入れるかどうかで見え方が変わります。白版がないと、貼った容器や中身の色が透けて、印刷した色が暗く薄く見えます。どの程度差が出るかは、中身や容器の色で変わります。表面にラミネートをかける場合も、グロス(光沢)仕上げでは色が濃く、鮮やかに見えることがあります。
こうした変化は、画面上のデータや、印刷とは別の方式で出した見本では確かめようがありません。校正を本番と同じ印刷機で刷ることに意味があるのはこのためです。
ラベル印刷の色校正が必要な案件と、省ける案件の分かれ目
色の基準をこちらに渡していただける場合は、色校正の必要性は下がります。前回刷ったラベルの現物がある、PANTONEやDICの色番号で指定できる、といったケースです。目標がはっきりしていれば、印刷会社はそこに向けて色を合わせられます。
とはいえ、基準があれば校正はいらない、とまでは言い切れません。色チップは特定の紙に刷られた見本です。素材の話で触れたとおり、和紙やホイル、透明フィルムに刷れば、同じ色番号でも見え方は変わります。見本との差をどこまで許容できるかで、判断が分かれます。
当社では、次のような場合に色校正をおすすめしています。
- 初めてご依頼いただくラベルで、合わせる刷り見本がない
- 印刷枚数が多く、色が違ったときの影響が大きい
- 社内で色の承認を取る必要がある
なお、色校正を省いた場合、納品後の色味についてのご相談にはお応えできません。厳しく聞こえるかもしれませんが、合意した基準がないまま刷ったものは、何をもって「違う」とするかを決められないからです。
有名企業のコーポレートカラーやタレントが使われる案件では、色校正は必ず行われます。慎重に進めても、NGが3回続いた案件がありました。最後は印刷の現場に立ち会っていただき、その場で色を決めたケースもあります。立ち会いの進め方は「シール印刷の立ち会いとは?現場で色や仕上がりを確認する方法」で紹介しています。
以前、ある広告代理店の方に、色校正をしない案件もあるという話をしたところ、「商品用のラベルなのに色校正をしない案件があるの?トラブルどうすんの?」と言われたことがあります。
色校正で決めた色は、再注文のときの基準になる
色校正は初回に手間がかかるため、できれば省きたいと考える方もいるはずです。ただ、継続して同じラベルを発注するなら、見方が少し変わります。
当社では、校了になった見本や刷り見本を保管しています。再注文のときは、その保管している色を目標にして合わせます。ご担当者が替わっても、「前と同じ色で」の「前」が現物として残っているわけです。
ただし、色校正をしていない場合、保管している刷り見本は、お客様と合意して決めた色ではありません。前回そう刷れた、というだけの色です。合意した基準ではない以上、色味のご相談に応じる根拠がありません。
迷ったときは、「この色が違っていたら、社内や取引先に説明がつくか」で考えてみてください。説明がつかないなら、校正を入れておくべき案件です。校正の費用と日数も含めて、見積もりの際にご案内します。
法人向けラベル・シール印刷のご相談
貼る製品や使用環境、寸法、予定数量が分かる範囲でご相談ください。
素材や加工が決まっていない場合も、用途に合わせて整理しながらご提案します。
通常2時間〜半日以内に回答します。